「第69回サンレモ音楽祭 ②」

今年もイタリア全土で大盛況のうちにフィナーレを迎えた第69回サンレモ音楽祭。毎年の事ですが、イタリア的大仰なセリフと仕草でグランド・フィナーレを迎えた翌日の新聞はあっさり別の話題に切り替わります、長々と余韻に浸ることは一般の新聞に限るとありません。今年も早速地方選挙の得票率や現与党のM5S(五つ星運動党)が強固な地盤を失った原因について「(同じく現与党の)北部同盟に接近しても割に合わないのでは」などと酷評されていました。北部同盟の党首であるサルヴィーニ副首相は難民拒否など強硬な政治姿勢で連日メディアに否定的に報道されているので、そのイメージがM5Sのイメージダウンにつながったと見られているようです。

-閑話休題-

さて、サンレモ音楽祭について話を戻しましょう。今年の勝利者はミラノ生まれのMahmoodが1位で、Ultimoは2位、Il Voloは3位という結果に。新生スター Alessandro Mahmoodはどんな人なのでしょうか?彼の母はサルデーニャ出身のイタリア人、父はエジプト人です。彼の外見も中東とイタリアの特徴が混在していることが分かる、なかなかイケメンの26歳です。彼自身はインタビューで「母はイタリア人で父はエジプト人だけど、僕はいつも100%イタリア人だよ」と答えています。音楽的嗜好についても「トラップやラップが好きで聞いているよ。僕のミックス・スタイルがどこから来ているのか分からないけれど、子供の頃いつも聞いていたアラブの音楽にも影響を受けているね。」と答えています。

そう、ここで何度もお伝えしているように今のイタリア音楽界はラップが勢力を強めています。今回優勝した彼の曲「Soldi」(金の意味、いわゆるマネーと言った方が良いでしょうか)もラップでした。一昔前のメロディアスなカンツォーネと違っているとはいえ、韻を踏む歌詞は非常によく練られています。曲の世界感を聞き手に伝える事と同時にテンポよく韻を踏む歌詞を作り上げることは大変だったとか。また私見ではサンレモ音楽祭の本レースの優勝曲は政治色が大きく影響しているのではないかと思うのです。それは「Soldi」の歌詞を見ても分かります。曲の舞台は「貧しい家庭、ラマダーン最中なのにシャンパンを飲んで水煙草を吸う父、尊厳を失って生きるのは難しい…最後に父は家族を捨てて失踪する」、これを聞いて誰もが思い描くのは難民の姿でしょう。ちなみに昨年の優勝曲も難民と世界の再生をテーマにした曲「Non abbiamo fatto niente」でした。でも実はMahmood自身は「僕はミラノ生まれで、育ったのもミラノだし、難民問題ってイマイチぴんとこないんだよね。」エジプトからの移民は難民問題が起こるかなり前から継続的にありますし、コプト派のキリスト教徒のエジプト人も数多く、イタリア社会でしっかり根付いている人たちからすると最近の難民問題は他人事なのかもしれません。

サンレモ音楽祭、こぼれ話はツィートでお伝えする予定です。もしよろしければアカデミア・イタリアーナのツィートもチェックしてくださいね。

 

Mahmoodの「Soldi」のオフィシャル・ビデオは:

 

Ultimoの「I tuoi particorari」のオフィシャル・ビデオは:

 

Il Voloの「Musica che resta」のオフィシャル・ビデオは: