「2019年上半期、イタリアで最も聞かれた曲は?」

2019年も半分過ぎました。今夏のイタリアはアフリカの熱波の影響で北部のアルプス地域で50度にも届く高温になり(熱波の通り道から外れていたサルデーニャ島でも40度の暑さ!)、それが去ったと思ったら大嵐で拳大の雹が降り犠牲者も一人でました。嵐に襲われた海岸では並べられていたビーチベットが風で宙を舞い凶器と化したそうです。

さて、FIMI(イタリア音楽産業業界)による今年の上半期最も聞かれた曲ベストテンには、残念ながら女性シンガーはゼロ。一方疑いの余地なく圧倒的勝者はUltimo(ウルティモ)で3曲がベストテン入り、うち1曲は1位の「Colpa delle favore」で今年のサンレモ音楽祭で2位でした。Ultimoはサンレモ音楽祭後のインタビューで一部の記者から無愛想な態度が問題視された(後にUltimoが2位に終わった自分に腹が立っていたからと説明した)のですが、実をいうとサンレモ音楽祭の視聴者投票では1位だったのでそれがそのまま反映されたわけです。

ベストテンに惜しくも届かなかったのはSfera Ebbasta、Rkomi、Capo Plazaと20代の若いラッパーたち。Sfera Ebbastaは2018年最も売れたラッパーで、イタリアの高校生から絶大な支持を得ています。ティーンの子供たちから親世代へじわじわとファン層を拡大していますが、数か月前彼のコンサートが予定されていたディスコでの事故で詰めかけていたティーン6人が犠牲になった(Sfera Ebbastaの会場到着前に起きた事故でコンサートは中止された)ことで好ましくない印象を世間に与えてしまいました。事故以来彼の歌詞は子供たちに良くないとか結構叩かれましたが、コンサートに通い詰めるティーンたちはいたって普通の子たちです(Fanpage.itに関連記事あり)。このコラムで繰り返しているように最近のイタリア音楽はラップが怒涛の勢いで勢力を増しています。個人的にはラップとポップの融合が面白いですね。イタリア語が持つメロディアスな響きとラップの組み合わせが新鮮に感じます。

さて女性シンガーの劣勢が悲しいところで、アメリカ人のレディーガガが15位以内に入ったものの、イタリア人シンガーではElisaのアルバム「Diari aperti」(2018年)が19位、Giordana Angiと続いたのみ。このみじめな状況に女性より男性の声のほうが声が良くて歌に向いているから、なんて言われてしまうほど。ちなみにマドンナの「マダムX」は発売後たった1週間でビルボード200の70位以下に落ちました。イタリア音楽界の今の空気と合ってないのか、記録的即落ちでした。