「9月25日の選挙を経て…新政権へ」

あれほど暑かった夏は過ぎ去り、今やイタリアも日本もめっきり寒くなりました。先ごろロンドンでゴッホのヒマワリにキャンベルのトマトスープを引っ掛けるという暴挙に出た環境テロが日本でも話題になりましたが、今年の夏は例年と比べて環境保護団体の抗議活動が一段と激しくなったように思いました。ウッフィッツィ美術館やヴァチカン美術館で展示物に横断幕をかけて環境保護をアピールし、広場や通りではいつにもまして過激な抗議デモが頻繁にありました。何しろ酷暑で水不足でしたから、危機感がいや増したのです。もっともロンドンより暴力性がないので日本では大きく報道されなかったように思います
そして迎えた9月、25日の選挙は大方の予想通り中道右派連合が大勝しました。イタリアの21州のなかで南部カンパーニア州を除いて全て中道右派連合になりました。唯一の例外であるカンパーニア州でも得票率が最も高かった政党は五つ星政党で、2番目が中道右派連合、中道左派連合は3位という結果になっています。イタリアの国会は下院(代議院)と上院(元老院)と二つありますが、両院ともに過半数を中道右派連合が占める結果になりました。因みに野党は大まかに言うと五つ星政党と中道左派連合に分かれています。勝者である中道右派連合の内訳を見てみると、第1党がイタリア同胞党、2番目が北部同盟、3番目がフォルツァ・イタリア党と続きます。中でもイタリア同胞党の大躍進は目を見張るものがありますね、しかも党首はジョルジャ・メローニなのでイタリア初の女性首相が誕生することになります。
メローニが北部同盟と手を携えて組閣するのは当初から言われている通りですが、ここ数日はフォルツァ・イタリア党の党首ベルルスコーニ(今回の選挙で9年ぶりに上院議員に当選)と険悪になっていました。というのも、議会でベルルスコーニの手元のメモをメディアのカメラが偶然映してしまい、そのメモには何と「メローニは傲慢不遜で…」と書かれていたのです。これにはメローニも気分を害して「私の悪口リストに“悪口には屈しない”と付け加えるべきね」と憮然とコメントしていました。結局その後会談して、両者ともいい大人ですから手打ちになったようですね。満面笑みの仲良し写真がメディアで一斉に報じられましたから。今回の“夫婦喧嘩”みたいな内輪揉めには北部同盟のサルヴィーニもさぞかし気を揉んだことでしょう。今回の選挙で結果が振るわなかった五つ星政党のコンテ党首は「中道右派連合、早くも瓦解へ」とちょっと意地悪くコメントしていました。
そして10月13日、14日と上院と下院の議長を選出する選挙がありました。結果は上院議長がイニャツィオ・ラ・ルッサ、下院議長がロレンツォ・フォンターナになりました。ラ・ルッサはムッソリーニの胸像収集が趣味と公言し、フォンターナはギリシアの極右政党に親書を送り同性婚や妊娠中絶に反対の政治家です。この人選に欧州の他国は一斉に色めき立ち、「メローニが早くも馬脚を現した」と報道しました。イタリアのメディアでも「誰が彼らを当選させたのか」と犯人捜しを始める記事まで出ました。そして同性愛や妊娠中絶の権利を定めた法律はどうなるの?との不安が早くも社会に広がっているようです。妊娠中絶に関して選挙前からキアラ・フェラーニなどイタリア社会に大きな影響力を持つインフルエンサーでさえも懸念していましたが、メローニは関連する法律第194条を100%適用し部分規制はないと公言しています。また同性婚(シビルユニオン)が公的に認められて日が浅いですが、これに関しては何も言われていないので今のとこと分からないですね。
そしてここにきて、ベルルスコーニが「プーチンとの友情が復活した。誕生日ギフトにウォッカとランブルスコを交換した」と語って一部メディアが大騒ぎになっています。ベルルスコーニのメディア受けするリップサービスはいつも面白いのですが、内閣入りする北部同盟はプーチンの政党と協約を交わし、党首のサルヴィーニは選挙前単独モスクワ入りし国中から“マジですか”と不安視され、同じくフォルツァ・イタリア党のベルルスコーニはここにきてプーチンの大親友と公言する…イタリアの未来は大丈夫か?ちょっと不安になるのでした。イタリア政治劇はまだまだ続くよ、どこまでも。さて、メローニの組閣はどうなるのでしょうか?

では